生理前と生理中の「人に言えない悩み」 おなら・おりもの・肌荒れ・匂いについて産婦人科医が解説【働く女性の健康相談室⑥】
生理や生理前の不快な症状には、痛みや精神面のつらさだけでなく、匂いやおりもの、おならなど、人に言えない悩みも多くあります。「これって異常なの?」「どうすればいい?」という疑問や不安に対し、前回(今こそ知りたい、生理についての疑問【働く女性の健康相談室①】)に引き続き、女性のヘルスケアの専門家で、よしかた産婦人科院長の善方裕美さんが答えます。
生理前におならが増える原因は? 女性ホルモンと腸の働きの関係
実は、生理前から生理中にかけて、おならが増えてしまうのが悩みです。仕事中も、ちょっと席を立った時などにおならが出てしまい、恥ずかしい思いをしています。原因や対策法はあるのでしょうか。
生理前におならが出やすくなるのは、この時期に分泌が増える女性ホルモンのプロゲステロンに、腸のぜん動運動を抑える作用があるからです。ぜん動運動が抑えられると、便が腸の中にとどまりやすく、発酵してガスがたまる原因にもなります。さらに、プロゲステロンには水分を体内にため込もうとする作用があるため、便の水分が吸収されて固くなりやすく、結果的に便秘をしやすくなるのです。
さらに、生理前はホルモンバランスの影響で、甘いものや炭水化物、脂っこいものを無性に食べたくなることがあります。こうした食事の偏りや過食が腸内環境を乱し、ガスの発生を増長させる原因になることもあります。また、生理中は子宮を収縮するプロスタグランジンという物質が多く出ます。これは、子宮だけでなく腸の収縮も促すので、ガスが押し出されやすく、軟便になる場合もあります。対策としては以下のようなことがおすすめです。
- ガスを発生させやすい食品を控える:豆類、さつまいも、キャベツ、炭酸飲料などをとりすぎないようにする。
- よく噛んで食べる:早食いは空気も一緒に飲み込んでしまい、ガスの原因になるため、ゆっくりよく噛むことを意識する。
- 適度な運動をする:ウォーキングや軽いストレッチなどで体を動かし、腸の働きをサポートする。
- 体を温める:お腹周りを温めることで血行を良くし、腸の働きを整える。
生理周期に伴う自然な体の変化なので、あまり神経質になりすぎず、リラックスして過ごすことも大切です。
おりものが多いのは病気?「正常な状態」と「病院へ行くべきサイン」の見分け方
私はおりものが気になるので、仕事や外出時には常におりものシートを使っているのですが、蒸れて不快感もあります。おりものシートは毎日使ってもいいのか、おりものが多い人は病院に行ったほうがいいのか、専門家の意見が聞きたいです。
「おりものが気になるけれど、おりものシートを使うと不快感がある」というのは、多くの女性が抱える悩みだと思います。おりものシートを使う場合、汚れたら早めに交換し、清潔に保つようにすれば、毎日使用しても問題ないと思います。ただ「蒸れて不快感がある」のであれば、雑菌が繁殖しやすくなり、肌トラブルや腟カンジダなどになるおそれもあるので、布製など、かぶれにくい素材のものを試してみたり、蒸れないように風通しのいい服装を心がけてみたりすると良いかもしれません。
一般的に、おりものは排卵期や生理前に増えることが多く、これは菌が腟内に入り込まずに洗い流すための「自浄作用」の意味合いがあります。おりものがサラサラした状態や白っぽい場合、また少し酸っぱい匂いであれば異常ではありません。いつもの自分の状態を知っておき、もし変化があったときは注意しましょう。特に、色が黄緑や赤茶など濃くなった、カッテージチーズのようなポロポロした状態になった、悪臭がする、かゆみや赤み、痛みなどがある、といった場合には病気のおそれがあるので、早めに受診してください。
生理前に気になるニキビ・吹き出物……「肌ゆらぎ」を抑える3つのアプローチ
生理前に必ず吹き出物ができてしまいます。普段は肌トラブルが全くないので、同期の女性に「生理前でしょ」とからかわれたりするのですが、職場には男性もいるので、生理周期などは絶対に知られたくありません。「たかが吹き出物」と言われるかもしれませんが、人目が気になり、会議や交渉も積極的に行えなくなってしまいます。ニキビケアのコスメを試しても効果がなかったのですが、漢方など、何か対策があれば教えてください。
生理前は女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が増えますが、これには皮脂の分泌を促す作用もあるため、ニキビや吹き出物に悩む女性は多くいます。この時期は刺激の少ない化粧品で、クレンジングや保湿などのスキンケアを丁寧に行い、ビタミンや食物繊維を意識的にとるなど、栄養バランスや睡眠時間の確保にも気をつけましょう。
漢方薬では、ニキビなどの炎症を抑える「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」のほか、「桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)」に効果が認められています。婦人科で処方も受けられますし、市販薬でも手に入ります。皮膚科でも、ニキビのタイプや肌の状態に合わせて、さまざまな治療が行われています。
このほか、月経困難症の治療に使う低用量ピルは、女性ホルモンの分泌を一定に保つことで排卵を抑制し、子宮内膜を薄く保って生理痛などを抑える薬ですが、ホルモンが一定に保たれるというメカニズムがニキビ抑制にも働くので、治療の副次効果としてニキビや吹き出物が改善する人は多いです。なお、月経困難症がない人は保険適用外になりますが、ニキビ対策として低用量ピルの処方を受けることもできますので、相談してみてください。
VIO脱毛で生理の不快感は減る? 生理中のビデの正しい使い方とは?
歯科で働いているので、生理中にナプキンが交換できないと、匂いが治療中の患者さんに分かってしまうのではと心配ですが、頻繁にトイレに行くことはできません。VIO脱毛をしたほうが清潔に保ちやすく、匂いも減ると聞いたのですが、本当でしょうか。またVIO脱毛は将来も含めてリスクはないのでしょうか。そして温水洗浄トイレのビデ機能やシャワーは、実はノズルが不潔だと聞いたことがあるのですが、生理中はこれらを使って洗ったほうがいいのでしょうか。
生理中にトイレに行きづらいと、匂いや、白衣に経血が漏れてしまうといった心配があり、つらいですよね。もしかすると職場の他の女性も、実は同じ悩みを感じているかもしれないので、一度相談をしてみて、お互いにフォローし合えるような環境がつくれるといいかもしれません。
ご質問のVIO脱毛ですが、経血などが毛に付着しにくくなるので、雑菌の繁殖が抑えられ、匂いや蒸れなどの軽減は期待できますが、脱毛施術中のやけどや色素沈着、契約関連のトラブルも報告されているようなので、施術方法や施設を選ぶ際には注意は必要だと思います。
温水洗浄トイレのビデ機能については、ノズルの汚れによって感染症になるリスクは低いと考えられますが、腟内まで洗ってしまうと、「デーデルライン桿菌」などの善玉菌が減ってしまい、逆に腟内に有害な細菌が増えすぎてしまうことがあります。ビデ機能を生理中に使うのであれば、外陰部周辺についた経血の汚れを落とすために使うにとどめ、腟内は洗わないようにしましょう。
横浜市立大学産婦人科客員准教授
高知医科大学卒業。横浜市立大学産婦人科勤務、医療法人よしかた産婦人科副院長などを経て、2020年より現職。横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科ヘルスケア外来を担当。専門は骨粗しょう症、更年期医療。横浜市立大学産婦人科客員准教授として若手医師の育成に従事する一方、年間約700人の赤ちゃんが生まれる、よしかた産婦人科の院長を務め、産後ケアの充実にも取り組む。3人の娘と大好きな音楽ライブに参戦することが一番の楽しみ。
(※内容は2026年3月取材時点のものです)