非正規雇用の女性が感じる大きなデメリット
生理や更年期をめぐる仕事のつらさ、サポートの格差とは
生理痛やPMS、更年期症状、不正出血など女性特有の不調を抱え、働きづらさを感じていても、非正規雇用の女性は「正規雇用に比べて仕事を休みづらい」「サポート制度がない」「生理や更年期の不安があると言ったら雇い止めされてしまうかもしれない」といった悩みやつらさを抱えやすい現状があります。この記事では、非正規雇用の女性から寄せられた声とともに、産婦人科医・産業医として女性の健康支援に取り組む飯田美穂先生のコメントを紹介します。
働く女性の声
※コメントは漢字や表現など一部変更しています。
非正規雇用の女性が感じている、健康支援の格差
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私は契約社員だが、業務内容は正社員と変わらないのに、休暇や健康サポートでは天と地のような差がある。
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「正社員で働くには健康上の不安があるので、休みが取りやすい派遣を選んだ」という女性は多いと思う。でも結果的には、サポート制度や福利厚生がないことも多く、仕事の安定性もないという、女性の弱みにつけこんだシステムだったと感じている。すべての働く人が、健康に問題がある時期は格差なくサポートを受け、何歳になっても再チャレンジできるような社会になってほしい。
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今まさに、私たち就職氷河期世代は更年期を迎えている。ずっと非正規で働いてきたため、更年期症状がつらくても企業の支援制度など何も使えないが、同じ職場の若い正社員は生理休暇を使ったり、低用量ピルの補助などを受けたりしている。氷河期世代の非正規雇用者はどこまでいっても損をし続けると感じる。
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生理が重いので低用量ピルを飲んでいるが、毎日、決まった時間に飲まなくてはいけないのに、勤務時間帯や休憩時間がバラバラのため難しい。平成の時代までは、女性の休日・深夜労働は法律で制限されていた※というが、今は正社員のような立場の保証もなく、安い給料で時間外にも働かされるので、女性にとってつらい世の中になっていると思う。
- ※1999年に労働基準法の「女子保護規定」が撤廃され、女性労働者の深夜時間外労働、休日労働の禁止・制限がなくなった。 深夜業に従事する女性労働者に対する措置(均等則第13条)
生理痛や更年期症状では「仕事を休めない」…職場の制度や空気
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私は過多月経や不正出血で通院しているが、立ち上がれないほどの不調をきたす日もある。しかし派遣社員なので生理休暇の申請ができないとされ※、有給休暇も使用しづらい。
- ※本来は派遣社員が生理休暇の申請ができないというのは誤り。労働基準法では、生理休暇は雇用形態に関わらず、すべての働く女性に取得が認められている。労働基準法のあらまし(生理休暇)
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「パートは使い捨て」と思っている会社が多いと感じる。子育てや介護をしつつ本人にも持病があるなど、大きな負担がかかっている女性は多いのに、無理をしてでも働かなくては生活が成り立たない。しかし中小企業では健康弱者に対して風当たりが強く、休むと「迷惑なヤツ!」などと言われてしまい、精神的に追い込まれて働くので、さらに不調になる。
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更年期症状がある私の世代では、パートなど非正規で働く女性が多く、日給が減るのを避けるために無理をしてでも働き、契約を切られないために不調を隠し続けている。
関連記事:都内2000社と働く女性5424人が回答! 「生理休暇」の現状と課題を徹底調査
産業医・産婦人科医から
非正規雇用の方にも産業保健を手厚くしようという取組や、非正規雇用を正社員に転換しようといった動きは一部の企業で進んでいるものの、まだ十分ではないのが現状だと思います。例えば「生理休暇は正社員しか利用できない」という誤った運用が行われていたり、有給休暇も申請しづらいといったケースが見受けられます。
これまで日本の産業保健は正規雇用を中心に考えられてきましたが、労働力人口が減少し、女性が就業者の約半数を占めるようになった現在では、非正規雇用で働く女性も含めて、職場での健康管理を適切に行い、安心して働き続けることのできる環境を整えていくことが求められていると感じています。多様な働き方が広がる中で、職場が労働者の健康管理をどのように推進していくべきかは国としても重要な課題です。2025年の法改正で、中小企業でもストレスチェックの義務化が決定し、非正規雇用の一部も対象になったことは、改善に向けた前進といえるかもしれません。
内閣府が行った「満足度・生活の質に関する調査報告書2025」では、非正規雇用者の生活への満足度は10点満点中5.53で、正規雇用者(5.76)を7年連続で下回っていました。ただし、40~50代の働く女性約2万人を対象に行われた別の調査※では、非正規雇用者の方が、主観的健康感が良好だったという結果も報告されています。この背景には「仕事と家庭の葛藤が少ないこと」が一因と示されており、私自身も産業医として面談を行う中で、人それぞれ置かれている状況や価値観が異なり、働き方も多様化しているので、一概に「正規雇用で頑張ることが良い」とは言えないとは感じます。
- ※Honjo et al., Journal of Epidemiology, 2020
ただコメントにあるように、健康不安と雇用不安を同時に抱えている非正規雇用の方は多くいます。こうした女性こそストレスが大きく健康管理が重要であることを、企業側にはぜひ認識して頂きたいです。そして非正規雇用で働く女性は、健康不安を感じたら早めに受診し、治療してほしいと思います。東京都労働相談情報センターや厚生労働省の「こころの耳」など、公的な心の相談窓口なども活用しましょう。
2008年慶應義塾大学医学部卒。2010年同大学医学部産婦人科学教室に入局し、産婦人科医としての研さんを積む。2017年同大学大学院医学研究科修了、医学博士取得。2018年同大学医学部衛生学公衆衛生学教室助教。2021年同講師。女性ヘルスケアの向上に資するエビデンス創出のための疫学研究や、企業における女性の健康支援に従事。女性の健康を社会医学・公衆衛生の側面から取り組んでいる。産婦人科専門医、女性ヘルスケア専門医、社会医学系指導医、日本医師会認定産業医。